第56回葬儀・法要コラム「相続の3つの方法」

単純承認

 

 単純承認とは、故人の相続財産を無条件で全て相続することです。特別な手続きは不要です。

 相続が始まったことを知ってから、故人がこの世を去ったことを知ってから3か月の間に何もしなければ自動的に単純承認をしたことになります。これを法定単純承認と言います。

 単純承認を選択して相続を行う場合は、故人が残した相続財産のプラスの財産もマイナスの財産も受け取るということになります。通常の場合は、プラスの財産がマイナスの財産より多く問題はないのですが、もし、マイナスの財産がプラスの財産より多い場合は、相続により借金を背負うことになるので注意が必要です。

 また相続人が、遺産の一部であっても、勝手に処分したり、隠したり、悪意で遺産目録に加えなかったりすると、単純承認とされてしまい、限定承認・相続放棄ができなくなってしまう恐れがあります。

相続放棄

 

 相続放棄とは、相続の権利を放棄して遺産を一切受け取らないことをいいます。亡くなった人の遺産は、配偶者や子供など相続人が相続します。ただし、相続人は必ず遺産を相続しなければならないわけではなく、相続しないこともできます。

 相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、他に相続人がいればその人たちだけで遺産を分け合うことになります。財産を相続しないことを選択する場合として、現預金や不動産などの財産より借入金などの債務の方が多い場合があります。というのは、被相続人の財産を相続した場合、プラスの財産だけでなくマイナスの財産、つまり借入金なども引き継ぎ、その後相続人が返済しなければならないからです。

 相続放棄には法的な手続きが必要で、相続人各人が個別にすることができます。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った日(通常は相続を開始した日)から3ヶ月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。

 また相続放棄をしてしまうと、原則として撤回することができません。また、その人に子や孫などの直系卑属がいても、代襲相続もできなくなります。

 

限定承認

 

 限定承認とは、相続財産の範囲内でのみ借金を返すということを条件にして相続を承認する手続きです。もし借金が膨大だった場合でも、相続財産を超えていれば返さなくてよいわけですから、相続人自身が損になることはありません。逆に、もしプラスの財産が残った場合には相続人が取得することができます。

 一見、とても良いところ取りの制度に見えるのですが、限定承認を利用するための手続きは、家庭裁判所への申立てが複雑なほか、準確定申告や譲渡所得税の申告が必要になる場合が大半となるので非常難解であり個人が自分ですることはほぼ不可能に近いものがあります。また、弁護士に頼んだ場合は内容によっては百万円単位の報酬がかかることがあるのです。

 また限定承認は相続開始を知った日から(通常は相続を開始した日)3ヶ月以内に相続人の住所地の家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。そのような理由から、便利な制度のように見えて実際に使われることは稀で、非常にレアケースといえます。

 

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