法的効力のある遺言事項
遺言書のは何を書いても構いませんが、法律上、効力を有する遺言事項は限られています。法的効力のある遺言事項は大きく分けて「財産に関する事項」、「身分に関する事項」「遺言執行者の指定」の3つに分かれています。
1 財産に関する事項
・遺贈➡︎法定相続人以外の人に遺産を継がせたい場合は、遺言書で定めることができます。
・生命保険金受取人の変更➡︎遺言書では生命保険金の受取人を変更することもできますが、相続人が遺言書を見るまでは
誰にも伝わらないため、保険会社や契約上の受取人を巻き込んだトラブルになる可能性があります。
・財産の寄付➡︎財産を寄付したり、財団法人を設立するなどして寄付することができる。
・信託の設定➡︎財産を、指定した信託銀行などに預けて、管理・運用してもらうことができる。
2 身分に関する事項
・子の認知➡︎婚外子と母の法的関係は出産した事実から明らかですが、婚外子と父の法的関係は認知によって成立します。
子を認知することによって、婚外子も相続人になることができます。
・未成年後見人・未成年後見監督人の指定➡︎未成年の相続人に親がいない場合、または親が同じ相続の当事者である場合は、
代理人として未成年後見人を立てなければなりません。
未成年後見人は遺言書で指定することができます。
また、後見人を監督する監督人を指定することもできます。
3 遺言執行者の指定
遺言書に書いたことは本人が実行することはできず、相続人が実行します。しかし、遺言書の内容が相続人にとって不利なものであれば、相続人が実行しない可能性もあります。
遺言書の内容を確実に実行するために、遺言書では遺言執行者を指定することができます。トラブルが予想される場合は、利害関係のない第三者を指定するとよいでしょう。自分の死後に誰かに遺言執行者を選んでもらうよう、遺言書で指示することもできます。
なお、遺言内容に子の認知、相続人の廃除が含まれている場合は、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、相続人が家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を選任してもらう必要があります。
家族への思いを伝える
「遺された家族に争って欲しくない」との強い思いから、誰にどの財産をどのくらい相続させる、例えば「家は妻に相続させ、金銭は子どもへ」のように財産に関してばかりに思いがいきがちです。
確かに遺言書の目的は遺言書作成者本人の相続財産の処理の方法を決めるものです。ただ、遺言書は文章ででしか思いを伝えることができません。遺された家族がこれからどうあってほしいのか、家族への感謝の言葉など等、そういった遺言作成者本人の家族への思いを作成することも大切です。相続させる理由や、家族への想い、これから家族がどうあってほしいかなど、本人の思いを付け加えるだけで遺された家族は本人の思いを理解できます。直接言葉で伝えられない以上、遺言書に記す文章は丁寧で伝わりやすいのが一番です。法的効力がないからと、付言事項を軽視すると結果的に争いがおき、遺言書通りの相続さえ家族の争いで叶わなくなってしまいます。
遺言書の本来の目的を果たすためにも付言事項を記すことは大切です。
遺言書で効力がない事項
以下の2つの事項は遺言書に記載しても法的な効力はありません。
・遺留分減殺の請求の禁止
・認知以外の身分行為(結婚・離婚、養子縁組・離縁)
兄弟姉妹を除く相続人には遺留分(最低限受け取れる遺産の割合)があり、遺留分に満たない財産しか相続できなかった人は、不足分を他の相続人に請求することができます(遺留分減殺の請求)。特定の人に遺産を多く継がせるために遺留分減殺の請求をしないように遺言書に書いても、その内容には法的な効力はありません。
また、遺言書に認知以外の身分行為に関する事項を書いても効力はありません。遺言書で子の認知はできますが、養子縁組はできないので、混同しないように注意しましょう。