第53回葬儀・法要コラム「もし遺言書が見つかったら」

公正証書遺言があった場合

 

 公正証書遺言の正本や謄本が見つかったときは、検認等の特別な手続は必要ありません。遺言の内容に従って直ちに具体的な相続手続に進むことができます。遺言者から公正証書遺言の存在を聞かされていたが、遺言の正本や謄本が見つからない場合は公証役場で公正証書遺言の内容を確認することができます。

 また、公正証書遺言の存在自体が不明の場合も公証役場で存否の確認をすることができます。平成元年以降に作成された公正証書遺言は、コンピューターで全国一律に管理されているので、どこの公証役場からでも確認することができます。ただし、原本を閲覧したり謄本を取ることができるのは、遺言が作成された公証役場だけです。

 公正証書遺言の存否の確認や閲覧等は相続人などの利害関係人のみすることができます。また、相続人等であっても、遺言者の生前に公正証書遺言に関して公証役場で問い合わせることはできません。

 

自筆証書遺言があった場合

 

 自筆証書遺言は、遺言者が誰にもその存在を知られることなく作成することができます。生前に遺言書を作成していると聞いていなくても、もしかすると遺言書を作成しているかもしれないため、遺言書を探す必要があります。

 自筆証書遺言が発見されたら、勝手に開封してはいけません。自筆証書遺言を勝手に開封すると5万円以下の過料が科されることとなっています。理由としては、内容の改ざんや偽造を疑われることとなってしまうためです。遺言書の取扱いを誤ると、ほかの相続人との争いとなる可能性があるため、勝手に開封することは絶対に避けなければなりません。

 自筆証書遺言を発見したら、家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要があります。遺言書は未開封のまま家庭裁判所に提出して、指定された日時に改めて行われる検認に立ち会う必要があります。そこで遺言書が有効と認められた場合には、その遺言書に書かれた内容にしたがって、その後の手続きを進めることになります。

 ただし、検認手続きでは遺言の有効・無効を判断するものではないので検認済み証明書付遺言書であっても内容が法的に不備や問題がある場合は、遺言の効力が否定され相続手続きに使用できない場合もあります。 

もし遺言を隠蔽・改ざんすると

 

 遺言書を隠した場合には相続欠格となります。 相続欠格とは、相続をする場合に、相続に適さない特定の事情がある場合に、相続人となることができないとする制度です。民法では891条第5号において、遺言書の隠匿が規定されます。 つまり、遺言書を隠すと、相続人になることができなくなります。後述する遺留分は相続人に与えられている権利ですが、不利な遺言で遺留分を侵害されている場合でも、遺言書を隠匿してしまうと相続人ではなくなってしまうため、遺留分侵害額請求権すら起こすことができなくなります。

 遺言を改ざんした場合は、その遺言内容は遺言者の意思により作成されたものとは言えませんので、その遺言は無効です。つまり遺言書の偽造は遺言の無効原因となります。また遺言書を偽造した場合には有印私文書偽造罪(刑法1591項)に問われます。ちなみに有印私文書偽造罪の法定刑は3月以上5年以下の懲役刑となりますので、絶対に隠蔽や改ざんをすることはやめてください。

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