事務局情報お知らせ

無縁墓問題：お寺の管理負担と解決への道

2025.07.14 / 最終更新日：2025.07.14

「専門家の窓口」では現代社会において寺院が直面する様々な問題に焦点を当てます。
住職様へのインタビューを通じて、お寺が抱える具体的な課題を深く掘り下げ、その本質に迫ります。
さらに、各分野の専門家から得られた貴重なアドバイスと深い知見をご紹介します。
寺院運営の新たな可能性を探り、より良い未来を築くためのヒントを提供します。

無縁墓とは何か

日本のお寺が直面する最も深刻な課題の一つが「無縁墓」の増加です。

無縁墓とは、相続者が不在となり、管理や供養がされなくなった墓のことを指します。
全国のお寺でこの問題が顕著で、1つの寺に平均5〜10件、場合によってはそれ以上の無縁墓が存在します。
特に地方の小規模な寺院では、この問題が運営の大きな負担となっています。

墓地の使用権は檀家に付与され、墓石の所有権も檀家側が持つのが一般的ですが、若い世代が「墓はいらない」と相続を放棄するケースが増加。お寺がその管理責任を負わざるを得ない状況が広がっています。

課題の背景と影響

・相続放棄の増加

現代社会では、都市化や核家族化が進み、伝統的な家族構造が変化しています。
インタビューでは、「おじいさんから息子、孫へと墓が引き継がれる前提が崩れている」と指摘されました。
相続者が「墓はいらない」と放棄する場合、墓地の使用権や墓石の管理責任がお寺に押し付けられます。
たとえば、相続放棄を正式に申し出られると、お寺が墓石の撤去や土地の管理を負担しなければならず、これが大きな財政的・時間的負担となります。

・高額な撤去費用

無縁墓の撤去には多額の費用がかかります。インタビューによると、標準的な3平米の墓の撤去費用は約40万円。
5件で200万円、10件なら400万円と、小規模な寺院にとって大きな出費です。
さらに、墓地が100年単位で放置されるケースも多く、土地の有効活用が困難に。

インタビューでは、「放置された墓地が敷地を占め、新たな檀家の受け入れや墓地の拡張ができない」との声が上がりました。
この状況は、お寺の運営資金を圧迫し、地域の景観や住民との関係にも影響を及ぼします。

解決策：専門家とプラットフォームの活用

・専門家窓口の役割

「専門家の窓口」では、弁護士や行政書士と連携し、効率的な手続きを支援します。
行政書士が戸籍調査や相続人特定を代行し、弁護士が法的手続きをサポートします。

インタビューで提案された「複数件をまとめて依頼する」方法は、コストを抑える有効な手段です。たとえば、10件の無縁墓を一括で専門家に委託することで、個別対応よりも効率的かつ低コストで解決可能。

・オンライン相談システム

インタビューで注目されたのが「1分単位のクレジット決済によるオンラインチャット相談」

このシステムは、住職が自宅や寺から気軽に専門家に相談できる仕組みで、小規模な問題でも迅速に対応可能。
たとえば、「相続放棄の手続き方法」「撤去費用の見積もり」など、具体的な質問に即座に回答を得られます。
このサービスは、お寺の負担を軽減し、専門家へのアクセスを容易にします。

・規約の明確化と事前予防

無縁墓問題を未然に防ぐには、墓地の使用規約を明確化することが重要です。

インタビューでは、「使用者が死亡し 5 年以内に相続人、親族若しくは縁故者から利用権承継の申出がない場合又は使用者が所在不明となり 10 年が経過した場合」と規約に明記する例が提案されました。
これにより、檀家との事前合意を形成し、後のトラブルを回避できます。
規約には「撤去費用の負担責任」も記載し、お寺の財政的リスクを軽減します。

・専門家の関与の難しさ

無縁墓問題の解決には、弁護士や司法書士の専門知識が必要ですが、インタビューでは「1件10万円程度の報酬がお寺には高額で、専門家には『小さな案件』と見なされがち」との課題が明らかに。
専門家にとって、1件ごとの収益が少ないため積極的に引き受けられず、お寺側もコスト負担に苦しむ状況です。
また、戸籍調査や相続人特定には時間と専門性が求められ、住職が単独で対応するのは困難です。