第11回葬儀・法要コラム「病院から遺体の引き取り後に行うしきたり」

遺体の引き取りの手配

 

病院で亡くなった場合は、いったん霊安室に安置されますが、病院の霊安室に安置できるのは半日ほどです。まず自宅に運ぶか、通夜・葬儀を行う場所に直接運ぶかなど、搬送先を決めなければなりません。また葬儀社の霊安室に運ぶ場合もあります。

 葬儀を依頼する葬儀社が決まっている場合は、すぐに連絡を入れて寝台車で運んでもらうようにしましょう。また、病院の外へご遺体を運ぶには、医師の書いた「死亡診断書」が必要ですし、搬送先の、ご遺体を安置する場所では近親者の方にお出迎えいただくのが望ましいものです。

 もし葬儀社が決まっていない場合は病院が出入りの葬儀社(搬送業者)を紹介してくれます。葬儀社を病院に紹介してもらうと、葬儀まで頼まなければならないと心配する方もいらっしゃると思いますが、搬送だけでも依頼ができますので、依頼するときは「搬送だけお願いします。」とはっきり伝えるようにしましょう。(葬儀に関しましては、お寺の窓口のお寺でも受け付けておりますので、ぜひご連絡いただければと思います。)

 

  死化粧と湯灌

 

 末期の水の後は、故人の最後の姿を清らかにするために遺体を清めます。これを「湯灌」といい、故人の現世での苦しみや迷いを遺族によって洗い清める、という意味があります。

 かつては、まず水を入れ、そこにお湯を注いで温度調節をし、通常のお風呂とは逆の手順を行い、死者に関することは逆にする「逆さ水」と呼ばれる風習がありました。

 現在では、ガーゼや脱脂綿をアルコールに浸して全身を軽くふく「清拭」が一般的です。遺体を清めたら、耳・鼻・口・肛門などに脱脂綿を詰めていきます。

 遺体の目が開いているときは、まぶたをそっとなでて閉じ、口が開いていたら下顎から支えて閉じます。また両手は胸の上のみぞおちの辺りで組ませます。基本的にこのような処置は、病院で亡くなった場合は看護師が行い、自宅で亡くなった場合は葬儀社が行います。

 遺体を清めたら、「死化粧」を施します。死化粧とは、 亡くなった方のご遺体を清め、整えることを言い、別の言葉でエンゼルメイクとも言います。死化粧では 遺体の髪をそろえ整え、爪を切ったり、男性であれば髭をそったりします。そして 安らかなお顔に見えるように 薄く化粧を施します。またほおがこけていれば、含み綿をいれます。

 遺族にとっても、故人には綺麗な状態で旅立ってもらいたいと思うもの。死化粧は 故人を、綺麗にしてお送りしたい、という遺族への配慮や気持ちに寄り添うものです。

 

末期の水

 

 臨終を告げられると、集まっている近親者が血縁の濃い順に「末期の水」をとります。末期の水とは、息を引き取った故人の口元を水で潤す儀式です。「死に水をとる」と言われることもあり、日本の葬式文化の中で、古くから宗派を問わず広く浸透している風習です。

 本来、末期の水を行うタイミングは、かつては臨終間際でしたが、現在では臨終後に親族で行うのが一般的となっています。

 末期の水は一般的には次のような手順で行います。

 1.箸先にガーゼや脱脂綿をくくりつけます。(脱脂綿の代わりに、しきみや菊の葉、鳥の羽根を使用することもあります。箸の代わりに新しい筆を使うこともあります。)

 2.桶やお椀に入った水に脱脂綿をつけて湿らせます。水は、生前故人が使用していた茶碗などに入れることもあります。

 3.脱脂綿を故人の唇に当てます。上唇から下唇の順番で、唇の左から右へなぞるように当てましょう。

 4.故人の顔をおでこ、鼻、顎の順番に拭きます。おでこを左から右へ、鼻を上から下へ、顎を左から右へ拭いていくのが作法です。

 病院で死亡する人が8割を超える現代では、看護師が湿らせた脱脂綿を用意してくれることが多いようです。病院で行われなかった場合は、自宅や遺体の安置場所に搬送してから行います。

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