3日に1回、お寺で何かが起きている ――年間100件超のイベントを12年間続ける理由

「気づいたら、年間100件を超えていました」――そう語るのは、大阪市内のとある地域に寺を構える副住職だ。ヨガ教室、書道体験、eスポーツ交流会、餅つき大会、流しそうめん、復興支援バザー、防災備蓄の整備……。活動の内容を書き出してみると、実に3日に1件のペースで何らかの取り組みが行われていることが明らかになった。本稿では、なぜこのお寺がこれほどまでに「地域の居場所」として機能しているのか、その背景と哲学を紐解いていく。

今回はNPO法人 縁遊さんにインタビューさせていただいた内容を元に記事作成をしております。

活動の始まりと12年の歩み

この取り組みが本格化したのは2014年2月のことである。NPO法人を設立し、地域住民に向けたさまざまな活動を展開し始めた。当初は試行錯誤の連続だったというが、一つのイベントが次のアイデアを生み、気づけば年間を通じた多彩なプログラムへと発展していた。

「企画会議はほとんどしていないんです。何かをやっていると、これと組み合わせたらどうかという派生が自然と出てくる」と副住職は振り返る。餅つきをやれば流しそうめんのアイデアが生まれ、高齢者向けのeスポーツ交流会を開けば、子どもも交えた多世代イベントへと発展していく。組織的な企画立案ではなく、実践の中から次の一手が育つ――その有機的な循環こそが、12年間の継続を支えてきた原動力といえる。

活動の実績が評価され、大阪市から表彰を受けた際のこと。市から「1年間の活動実績を出してほしい」と求められ、初めてすべての活動を書き出してみたところ、100件を超えていることに気づいたという。「自分では全然わかっていなかった」と副住職は苦笑するが、この数字こそが継続の証である。

地域に根ざした多彩なプログラム

活動の幅広さは、特筆すべき点だ。毎週水曜日には境内でヨガ教室が開かれ、地域の住民が汗を流す。2ヶ月に1回は書道体験教室を開催し、年配の書道家を招いて葉書の宛名書きから掛け軸への揮毫まで、参加者の希望に合わせた指導が行われる。子どもたちが集う餅つき大会や流しそうめんは夏冬の風物詩として定着し、毎回100名を超える参加者が訪れる。

高齢者向けには、大阪市の事業と連携した「100歳体操」を第2・第4金曜日に実施。プロジェクターでDVDを流しながら椅子に座って行うこの体操には、毎回10〜20名が参加する。体操後には参加者同士が自然と言葉を交わし、地域のつながりが生まれる場となっている。さらに近年では、高齢者と子どもが同じチームを組むeスポーツ交流会も開始。世代を超えた交流の場として注目を集めている。

また、復興支援活動も継続的に取り組んできた。イベントでの売上の一部を被災地への義援金に充てるとともに、被災地の特産品を取り寄せて販売することで、その地域の経済的な支援も行う。熊本地震の際には、1年間かけて集めた義援金を直接現地に届けるため、日帰りで被災地を訪れたこともある。「断られたことはないですが、断らないでしょうね」と副住職は穏やかに笑う。

継続を支える思想と運営の工夫

これだけ多くの活動を、スタッフ4名という少人数体制で運営している事実は驚異的だ。その秘訣を尋ねると、「新しいことを追いかけるより、続けることを大切にしている」という言葉が返ってきた。継続こそが信頼を生み、信頼が人を呼ぶ。この単純な真理を、このお寺は12年間かけて実証し続けてきた。

集客の手法もシンプルだ。折り込みチラシを活用しているものの、副住職は「本来なら折り込みを入れなくても来てくれる」と語る。掲示板への告知と、日々の境内での対話を通じた口コミが、長年にわたって参加者を呼び込む力となっている。地域住民にとってこのお寺は、行事がある時だけ訪れる場所ではなく、いつでも立ち寄れる「生活の一部」になっているのだ。

運営上の反省会は定期的に行うが、企画会議はほぼ開かない。現場での気づきを素直に次の活動につなげる柔軟さが、硬直した計画に縛られることなく地域のニーズに応え続ける力の源泉となっている。

お寺が「地域の拠点」である意義

宗教施設としてのお寺が、こうした多様な地域活動の場となることには、特別な意義がある。お寺はもともと、冠婚葬祭だけでなく、地域コミュニティの核としての役割を担ってきた場所だ。しかし現代においては、その機能が薄れ、葬儀の時だけ関わる場所として認識されがちである。

このお寺の取り組みは、その流れに対するひとつの答えを示している。日常的に人が集まり、笑い声が響き、世代を超えた対話が生まれる場所としてのお寺。そこには、住職や副住職が「宗教者」である以前に「地域の一員」として住民と向き合う姿勢がある。

「子どもが集まると、大人が来る」という副住職の言葉は示唆に富む。子どもたちが楽しめる場を作ることが、保護者の参加を促し、さらには祖父母世代とのつながりを生む。多世代が交わる場としてのお寺は、地域の社会的なつながりを再編する力を持っている。

 

3日に1回のペースでイベントを開き、12年間休まず地域と向き合い続けてきたこのお寺の姿は、現代のお寺が担いうる役割の豊かさを示している。規模の大小ではなく、地域への真摯な関わりを継続することが、お寺と地域の双方にとっての豊かさを生み出す。その実践から、私たちが学べることは少なくない。

寺院運営に関わるすべての方に問いかけたい。あなたのお寺は、地域の人々にとって「いつでも行ける場所」になっているだろうか。

 

NPO法人 縁遊

HP:https://npoenjoy.com/news/

Instagram:https://www.instagram.com/npoenjoy/(イベント情報など更新中)

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