お寺に「ご門徒以外」を呼ぶために ――地域イベントが紡いだ縁と継続の力

きっかけは「お寺を開く」という想いから

お寺は本来、地域の人々が集う場所であったはずだ。しかし現代においては、法事や葬儀といった弔事の場としての印象が先行し、日常的にお寺の門をくぐる機会は失われつつある。そのような問題意識を持って活動を始めたのが、大阪でNPO法人を立ち上げられた多藝さんです。今回は多藝さんの運営されておりますNPO法人 縁遊 – えんじょい -さんのインタビュー記事になります。

多藝さんがNPO法人を設立したのは2014年のことである。大学時代にイベント運営の経験を積み、その後、仏教を学ぶ学院で僧侶としての研鑽を積む中で、「これまでやってきたことをお寺に持ち帰れないか」という問いが生まれた。ご門徒以外の方にもお寺に足を運んでいただくきっかけをつくりたい。そのシンプルな想いが、地域イベントというかたちで結実していった。

 

まず「落語会」から——村社会に響いた笑いの縁

最初に企画したイベントは「落語会」であった。その地域は年配の方が多く、まだ地縁・血縁を大切にする村社会的な雰囲気が残っていた。「誰もが親しみやすいものから始めよう」という判断のもと選ばれたのが、日本の伝統芸能である落語だった。

第一回の落語会は、予想をはるかに超える盛況ぶりとなった。以来、年3回のペースで継続して開催されており、毎回30名前後が参加するという。笑いを通じて人々がお寺に集まる。その光景は、住職にとって大きな手応えとなったという。

落語会の開催にあたっては、当初「野菜の直売」との同時開催を試みたこともあった。しかし、重い野菜を抱えた参加者がいったん帰宅してしまうため、合わせると参加率が下がることが判明した。「やってみて初めて分かること」として、現在は別々の開催に切り替えている。

 

ヨガ、流しそうめん、もちつき——多様な企画で「また来たい場所」へ

落語会の成功をきっかけに、境内でのイベントはさらに多様化していった。ヨガ教室、流しそうめん、もちつき大会など、世代を問わず楽しめる企画が次々と生まれた。もちつきや流しそうめんは子ども連れの家族にも人気で、多い回には100名前後が訪れるという。

ヨガ教室は参加者が少ない回で20〜30名程度と比較的こぢんまりとしているが、「少人数だからこそ丁寧に関われる」という良さもある。いずれのイベントも共通しているのは、「お寺に何度でも足を運びたくなる理由を作る」という視点だ。

また、お寺の紹介動画をYouTubeで公開する取り組みも行っている。境内をドローンで空撮した映像や、本堂の内部を紹介するショートムービーを通じて、ご門徒以外の方にも「こんなお寺があったのか」と知ってもらうことを目指している。

 

「ヨガ」が最大の成功事例——企業協賛まで生まれたワケ

数ある取り組みの中で、住職が「最も成功した」と語るのがヨガ教室の継続開催だ。開始から10年以上が経過し、現在は第33回を数えるまでになった。1年に3〜4回のペースでの開催だが、「やめるきっかけがなくなった」という状況が生まれており、それはまさしく「良い悩み」と言えるだろう。

このイベントの継続は、単なる集客以上の副産物をもたらした。協賛企業の存在だ。地域の企業が広告配布などを通じてイベントに協力してくれるようになり、新聞折り込みでの告知も継続している。「ヨガをやっていると声をかけやすい」という企業側のニーズと、「場を提供したい」というお寺の想いがうまく合致した結果だ。

継続がつくる信頼——他のお寺からも声がかかるように

地道な活動を続ける中で、ある変化が生まれた。他のお寺からも「うちでも野菜の直売をやってほしい」「イベントの運営を教えてほしい」といった声がかかるようになったのだ。一つひとつのイベントを丁寧に積み重ねてきたことが、地域の中での信頼として結実しているといえる。

「やっぱりまだ迷っているお寺は多い」と住職は率直に語る。それでも、継続することで道は開ける。お寺のイベント運営に悩む住職や僧侶にとって、この事例は大きな示唆を与えてくれるはずだ。

お寺を「弔いの場」から「縁を結ぶ場」へと変えるための一歩は、特別なものでなくていい。落語でも、ヨガでも、もちつきでもいい。大切なのは「ご門徒以外の方にも来ていただきたい」という想いを、地道に、継続して形にし続けることではないだろうか。

https://npoenjoy.com/

NPO法人 縁遊 – えんじょい –

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