子供向けアプローチの重要性―種を蒔く長期戦略

はじめに

即効性のある施策が求められる現代において、子供向けのアプローチは一見非効率に見えるかもしれない。しかし、複数の寺院で子供向けの取り組みを重視する動きが広がっている。それは単なる社会貢献ではなく、寺院の未来を見据えた長期的な戦略とし、広げている寺院が多いです。そんなとある寺院での例をご紹介します。。

無料で教室を貸す寺院

ある寺院では、「本堂を無料で教室を貸してる」という取り組みを行っている。対象は「子供」だ。「無料で教室を貸してて、その子供がちゃんと遊べるようなところもちゃんと作ってた」という。

これは完全な持ち出しだ。収益は一切ない。

「昔うちでもボーイスカウトやってた」という経験から、「そういう方々が大人になった時って月参りに来る」という効果を実感しているとのことで

「やっぱりなんかその子供の頃からやっぱりそのお寺に来るっていう環境を作ってあげることによって」、寺院が身近な存在になる。

つまり、書道など特定のスキルを持つ僧侶だからこそできる取り組みではあるが、形は何であれ、子供との接点を作ることの重要性は変わらない。

たこ焼きパーティーという戦略

30代後半の住職は、「今ちょっとたこ焼きパーティーやろうかなと思って」いるという。

「私、今30代後半の年なんで、年代ってやっぱり子供が何人かやっぱりできてるんですよね。そういう子たちを檀家さんの同じ年齢の人たちを集めて」という、極めてスモールスタートな計画だ。

「寺でこういうことあるから来てよとかって。お寺行かなきゃいけないんだよねっていうのをちょっと植え付けていく」

月1回のお話し会

より組織的な取り組みとして、「月に1回お話し会っていうのやって大体の2時からってのもう固定にして毎月こうテーマを決めてちょっとお話をさせてもらってその後みんなでお菓子食べたり遊んだりとかしてっていう会をやってる」という事例もある。

重要なのは、「収益云々っていうのはもう抜きにしてもう完全に子供たちのためにとか、お寺っていうのを知ってもらいたいとか活動的なところとして割り切ってやってるっていう感じ」という姿勢だ。

「結構子供たちも楽しんでくれるので、それはやっぱいい」。子供が楽しめる場所として認識されること自体が、成果なのだ。

親世代へのアプローチ

子供向けアプローチの真の狙いは、実は親世代にある。

「そこでやっぱり子供が関わってると親も必然的に関わってくる」。子供が寺院に行きたければ、親は連れて行かざるを得ない。そのプロセスで、親自身も寺院と接点を持つことになる。

そしたらもしおじいちゃんが亡くなった時に頼れるところどこだろうっていうときに思い出してもらえれば、それまでお寺に来てくれる方だったら、相談してもらえる機会につながる。だから葬儀屋さんに行くんじゃなくて、相談できる存在でいることができる。

つまり、子供時代に寺院と接点を持った人は、いざという時に「葬儀屋さんに行く」のではなく、「お寺に」連絡する。この行動パターンの違いが、決定的に重要なのだ。

長期的視点の必要性

子供向けアプローチは、本質的に長期戦だ。

「子供の取り組みってね、足が長いからどうしても後回しにしがちだったりとかすぐにね効果が出るものではないけど、やっぱりでもすぐに結果が出るものだけをお寺がやり始めたらそれはそれでちょっともう終わりかなというところもある」

即効性のある施策だけを追い求めれば、短期的には効率的に見えるかもしれない。しかし、それでは未来がない。すぐにこう結果が必要な分野とこれはもう長期的に育てていく分野っていうのでちゃんと切り分けてある意味割り切って進めていくことも大事。

つまり、短期的な収益事業と、長期的な種まきを、両方同時に進める必要がある。その長期的な種まきの最たるものが、子供向けアプローチなのだ。

記憶に残る存在になる

子供時代の記憶は強い。「学生時代のアルバイトで一緒だった同僚」が、数十年後に仕事で協力関係になる。「学生時代からの繋がりっていうのがあってもうお願いしようみたいになってお願いした」という実例がある。

「子供からの付き合いだったりとか小さな頃の記憶ってやっぱり大事だな」「そういう繋がりとかはなんかこの異業種以外でもすごく大事なことなのかなって改めて思いました」

寺院も同じだ。子供時代に「お寺で遊んだ」「お寺でお話を聞いた」「お寺でたこ焼きを食べた」という記憶があれば、大人になった時に、寺院は「よくわからない怖い場所」ではなく、「懐かしい場所」「相談できる場所」になる。

信仰の自由と選択肢

子供向けアプローチには、もう一つの側面がある。それは、宗派を超えた出会いの機会を提供することだ。

「いつも行っている寺院があれば、もちろんあったらあったで、そっちに行くでしょうし、ふわふわふわっとしてるところだと、どこでもいいやっていうところも中には多分ある」

そういう人々に対して、「信仰の自由っていうところを考えた時に、色々な宗派の考え方を知る機会があれば、自分に合った宗派を選ぶことができる」

つまり、子供時代に複数の宗派に触れる機会があれば、大人になった時に、自分に合った宗派を選ぶことができる。宗派がはっきりしない人々にとって、これは貴重な機会なのだ。

都市部でのトレンド

「やっぱりこう都会からだんだんその全てのトレンドは地方に、都会から地方に行く」という流れの中で、都市部ではすでに変化が起きている。

「今やっぱりだんだんそのお寺の檀家制度っていうのから家とお寺が合うんじゃなくて、もう個人とお坊さんとかあ、個人そういう付き合いになっていってる」

家単位ではなく、個人単位での寺院選び。この流れが地方にも「多分まだ地方はね、もう10年20年ぐらいかかる」が、やってくる。

その時、選ばれる寺院になるためには、「その時が来た時のための仕組みづくりをね、今しておけば、その受け皿として持っとけばだんだんそういう風になってきた時に、頼ってもらえるとか安心してもらえるような仕組みができれば」

子供向けアプローチは、まさにその「仕組みづくり」の一環なのだ。10年後、20年後に、「あのお寺、子供の頃行ったことある」という人が、自分の意志でそのお寺を選ぶ。そのための種を、今蒔いているのだ。

寺町での実践

都市部では、より戦略的なアプローチも行われている。複数の寺院が集まる地域で、宗派を超えた取り組みを行う事例がある。

寺町、つまり複数の寺院が集まる地域で、宗派を超えた取り組みを行う。これにより、来訪者は複数の宗派に触れ、比較することができる。子供にとっても、親にとっても、選択肢を知る貴重な機会となる。

収益性との両立

重要なのは、子供向けアプローチを「割り切る」ことだ。

「収益云々っていうのはもう抜きにしてもう完全に子供たちのためにとか、お寺っていうのを知ってもらいたいとかま活動的なところとして割り切ってやってる」

収益を求めれば、本末転倒になる。子供向けアプローチは、それ自体で収益を生むものではない。しかし、10年後、20年後の檀家・信者を育てる投資なのだ。

だからこそ、「すぐに結果が必要な分野」、つまり収益事業は別に確保しておく必要がある。葬儀、法事、墓地管理など、既存の収益源をしっかり維持した上で、その余力で子供向けの取り組みを行う。この両立が、寺院経営の基本なのだ。

結語

子供向けアプローチは、一見非効率に見える。すぐに檀家が増えるわけでもなく、収益が上がるわけでもない。しかし、それは未来への投資だ。

「小さな頃の記憶ってやっぱり大事」。子供時代に寺院と接点を持った人は、大人になっても寺院を忘れない。いざという時に、「どこに相談しよう」ではなく、「あのお寺に連絡しよう」となる。

「子供の取り組みってね、足が長いから」こそ、今始めなければならない。10年後、20年後に実を結ぶ種を、今蒔く。それが、寺院の未来を切り開く鍵なのだ。

たこ焼きパーティーでも、お話し会でも、書道教室でも、形は何でもいい。大切なのは、子供たちが「お寺って楽しい場所だな」と思えること。その記憶が、未来の寺院を支える力になるのだから。

専門家の窓口」の役割

「専門家の窓口」では、地域ごとの課題を共有し、解決策を共に考える場を提供します。 

インタビューの経験から、派遣僧侶問題は地域の慣習の理解とコミュニケーションで解決可能であることがわかります。私たちの目標は、お寺の課題を「見える化」し、共感と協力の輪を広げることです。

おわりに

地域ごとの慣習は、お寺の運営に大きな影響を与えます。派遣僧侶問題は、適切な準備と対話で解決可能です。「専門家の窓口」は、これからもお寺のリアルな声を届け、皆さんと共に未来のお寺を考えていきます。あなたのお寺での地域特有の課題を、ぜひ教えてください!

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