先行料・マージン・値引き交渉まで、住職が語るリアルな現場

葬儀件数を増やすにあたって、多くの住職が避けて通れないのが「葬儀社との関係づくり」である。とはいえ、紹介料・先行料・マージンといった金銭的な取り決めについては、業界内でもなかなか公には語られることがない。

今回、ある地域で年間170件を超える葬儀に関わるA住職に、複数の葬儀社との具体的な付き合い方と金銭的な仕組みについて率直に語っていただいた。寺院経営の現実を理解するうえで参考になれば幸いである。

葬儀社との関係はどう始まるのか

A住職が複数の葬儀社から葬儀を紹介されるようになった原点は、「とにかく丁寧にお参りをする」という姿勢の積み重ねだったという。自ら営業をかけたわけでも、特定の葬儀社に売り込みをしたわけでもない。

ただし、現在では複数の葬儀社と取引があり、その性格は大きく2種類に分けられる。

① 地元密着型の葬儀社(市営・公営含む):先行料という形で謝礼を受け取る

② 全国展開のネット系葬儀社:マージン(紹介手数料)として一定割合を差し引かれる

この両者では、金銭の流れも寺院に残る収益も大きく異なる。それぞれの実態を以下で詳しく見ていきたい。

「先行料」という仕組み——地元葬儀社との取引

地元の葬儀社とのやりとりで特徴的なのが「先行料」という慣習である。これは読経謝礼(お布施)とは別に、葬儀社から寺院へ渡される謝礼の一形態だ。

A住職の説明によると、その流れはおおよそ以下のようなものである。

葬儀社の担当者が「今回の葬儀ではお布施とは別に、先行料として1万円または2万円でいかがでしょうか」と住職に確認する。金額に合意すれば、葬儀社は喪主に対して「お寺様からの先行(線香)です」と現物の線香を渡し、寺院からの贈り物という形を整える。住職はその金額を葬儀社から受け取る仕組みである。

この先行料は1万〜2万円程度が相場で、3万円を超えることはほとんどないという。葬儀全体の費用が10万円台の場合でも、先行料を差し引いた残りが寺院側の実収入となる。

低価格帯の葬儀でも成立する理由

インタビューでは、ある地域の市が運営する公営葬儀(通夜・葬儀で20万円)やその他の低価格帯葬儀社(12〜14万円程度)の事例も紹介された。仮に葬儀費用が12万円で先行料が1万円であれば、喪主が支払う実質的な費用は11万円となる。

「葬儀の規模や費用が小さくても、その後に法事や墓地購入といった継続的なご縁につながることがある。だからこそ、件数を大切にしている」とA住職は語る。先行料という仕組みは、低単価の葬儀でも寺院が関わり続けるインセンティブを生む仕掛けともいえる。

ネット系葬儀社との「マージン」構造

一方、全国展開のネット系葬儀社との取引は、先行料とは異なる仕組みで動いている。A住職が関わる複数の葬儀社ではおおむね50〜60%のマージンが差し引かれるという。

表中のマージン率はあくまで目安であり、案件ごとに交渉が入ることも珍しくない。また地域密着型の大規模会館については、マージンを取らない代わりに高単価の葬儀を紹介してくれるケースもあるという。「紹介をいただく以上、ある程度の中抜きは仕方がない部分もある」とA住職は率直に話す。

住職だから使える「値引き交渉」という選択肢

ネット系葬儀社との付き合いで興味深いのが、住職という立場を活かした価格交渉の存在だ。

通常、喪主が葬儀を依頼する場合は定価での対応が基本となる。しかし住職が「これは同業者の葬儀です」と申し出た場合、葬儀社側が価格を柔軟に下げてくれるケースがあるという。A住職はこの点を次のように説明する。

「例えば定価で25万円の葬儀があったとして、費用の工面が難しそうな場合に『15万円でお願いできますか』と相談すると、『それでいいですよ』と応じてくれることがある。住職という立場だからこそ切り出せる交渉です。一般の喪主には言いにくいことを、こちらから提案できる」

この「住職ブランド」を活用した値引き交渉は、喪主の経済的負担を軽減しながら、葬儀社・住職・遺族の三者にとって現実的な着地点を見出す知恵でもある。もちろん、葬儀社との信頼関係が築かれていることが前提となるが、長期的な関係の中で生まれてくる選択肢といえるだろう。

「マージンを取られても受ける」理由

ネット系葬儀社のマージン率が50〜60%に達する現状は、住職にとって決して歓迎すべきものではない。しかしA住職はそれでも受ける姿勢を崩さない。その理由は明快である。

「都市部では、もともと特定のお寺と檀家関係がない方が多い。紹介がなければそもそも縁がつながらない。マージンを差し引かれても、葬儀を受けることで法事が生まれ、お墓の購入にもつながる。最初の一件さえ受ければ、その後はこちらでお付き合いを続けられる」

つまり「一時的に収益が薄くても、長期的な縁を得る投資」として葬儀紹介を捉えているのだ。葬儀一件に完結して終わるのではなく、その後に続く法事・納骨・墓地まで含めて考えたとき、紹介経由の葬儀にも十分な意義がある——というのがA住職の経営観である。

もっとも、「背に腹は代えられない部分もある」と率直に認めつつも、こうした現実と正面から向き合いながら関係を積み上げてきた姿勢が、現在の件数につながっていることは間違いない。

おわりに——「紹介料」は必要経費か、それとも見直すべき慣習か

先行料・マージンという仕組みは、葬儀社と寺院が互いの利益を調整するための業界慣習として定着しているが、その是非についての議論は尽きない。透明性の観点からも、また僧侶としての本分という観点からも、悩ましい問題であることは確かだ。

しかしA住職の実践が示すのは、「仕組みの是非を論じる前に、まずその仕組みを深く理解したうえで使いこなす」という現実的な姿勢である。どの葬儀社とどのような関係を結ぶかを主体的に選び、値引き交渉という選択肢も持ちながら、長期的なご縁を丁寧に育てていく。

寺院経営において「葬儀社との関係」は、避けて通れないテーマである。その実態を正確に把握することが、自院にとって最善の判断を下すための第一歩となるだろう。

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