御朱印で変わる寺院運営―SNS時代の新しい参拝者との繋がり方

はじめに

近年、寺院運営において御朱印が注目を集めています。かつては参拝の証として静かに授与されていた御朱印が、今やSNSと結びつき、若い世代を中心に新たな参拝文化を生み出しています。ある都市部の寺院では、御朱印事業を通じて参拝者との新しい接点を見出し、成功を収めています。

お寺では参拝印」として呼ばれていることも多いようです。

宗派による御朱印への考え方の違い

一部の宗派では伝統的に御朱印をあまり推奨してこなかった歴史があります。しかし、時代の変化とともに、参拝者のニーズに応える形で御朱印を始める寺院が増えつつあります。

ある若手の寺院関係者は、「宗派的にはあまり御朱印をやっているお寺は少ない」としながらも、他宗派で御朱印に取り組む寺院を参考に、自身の寺院でも参拝印の授与を開始しました。

重要なのは、「御朱印」という言葉の使い方です。浄土真宗では「参拝印」や「参拝記念印」という表現を用いることで、宗派の考え方を尊重しながら、参拝者の要望に応えています。新規で葬儀を執り行った方から「御朱印ありますか?」と聞かれた際も、「それは御朱印ではなく参拝印です」と丁寧に説明することで、教え方の違いを伝える良い機会にもなっています。

SNSを活用した現代的なアプローチ

この寺院の成功の鍵は、Instagram活用にあります。参拝印のデザインや寺院の雰囲気を定期的に投稿することで、「インスタを見てお参りに来ました」という参拝者が徐々に増加しています。

特に工夫しているのは、参拝印のデザイン性です。寺院に縁のある歴史上の人物をモチーフにしたイラストを、デザイナーの友人に依頼して制作。そのイラストを印面にすることで、オリジナリティあふれる参拝印が完成しました。他の印面はインターネットで購入したものを活用し、コストを抑えながらバリエーションを増やしています。

季節ごとに異なるデザインを展開することも、リピーターを増やす戦略の一つです。「夏から始めたので、夏のものと秋のものしかまだない」とのことですが、季節の移ろいを感じられる参拝印は、コレクター心をくすぐります。

参拝者との新しい接点

参拝印を始めたことで、予想外の効果も生まれています。それは、参拝者との直接的なコミュニケーションの機会が増えたことです。

「本当にフラッと午前中にピンポンという感じで来てくださる」という参拝者に対して、余裕がある時にはお茶を出して会話をする時間を設けています。このような何気ない交流が、寺院と地域、そして参拝者との距離を縮めています。

参拝印を求めて来る方の多くは都市部在住者で、寺檀に関係がない方も少なくありません。従来の檀家制度だけに依存しない、新しい寺院と人々との関係性が築かれつつあります。

「御朱印」と「お布施」の違い

参拝印を授与する際、避けて通れないのが対価の問題です。「御朱印」という言葉を使うと、それは物品として課税対象になります。一方、「お布施」は宗教行為として非課税です。

この微妙な線引きについて、寺院側は慎重に対応しています。参拝者に対しては、あくまで「お布施」としていただく形を取りつつ、その意味についても丁寧に説明することが求められます。

興味深いのは、ある寺院で聞いた話ですが、御朱印は課税対象であるのに対し、お守りは非課税という違いがあるそうです。これは仏様を祀っているかどうかという宗教性の違いによるもので、御朱印はあくまで「物品」として扱われるためです。

家族経営における課題

参拝印事業には良い面ばかりではありません。特に家族経営の寺院では、新しい取り組みを始めることへの抵抗もあります。

「結局ずっと誰かしらお寺にいなきゃいけない」「休む時間がない」という声は、多くの寺院関係者が抱える悩みです。特に住職の母親など年配の家族からは、「これ以上負担を増やさないでほしい」という反対の声も上がります。

一年中開いている寺院で、いつ訪れるか分からない参拝者に対応するのは、想像以上に大変な仕事です。この若手副住職も、仏壇店に勤務しながら寺院の手伝いをしているため、十分に対応できていないという自覚を持っています。

継続可能な運営のために

これらの課題に対して、いくつかの解決策が考えられます。

対応時間の明確化: すべての時間に対応するのではなく、参拝印授与の時間を土日や特定の時間帯に限定する方法があります。

予約制の導入: SNSやウェブサイトで事前予約を受け付けることで、対応する側の負担を軽減できます。

デジタル化: 後述しますが、御朱印のネット販売という選択肢も登場しています。

家族の理解を得る: 新しい取り組みのメリット(参拝者増加、収入の安定化)を数字で示すことで、徐々に理解を得ていくことが重要です。

他寺院の成功事例に学ぶ

ある寺院では、奥様が書道に優れており、美しい御朱印で知られています。このような寺院を参考にしながら、自分の寺院に合った形を模索することが大切です。

また、御朱印を集める文化は確実に広がっており、「結構集めてる方は集めてるみたい」という状況です。この需要を取り込むことは、寺院の持続可能性を高める一つの方法といえるでしょう。

まとめ―伝統と革新のバランス

御朱印(参拝印)事業は、伝統的な寺院運営に新しい風を吹き込んでいます。SNSという現代のツールを活用しながら、寺院の歴史や教えを伝え、新しい世代との接点を作る。それは決して伝統を壊すものではなく、むしろ寺院の存在意義を現代に問い直す試みといえます。

もちろん課題もあります。家族の理解、運営の負担、宗派の考え方との整合性。しかし、これらの課題と向き合いながら、一歩ずつ前に進むことで、寺院は地域や人々との新しい関係を築いていけるのではないでしょうか。

「興味ある方はいらっしゃる」―この副住職の言葉は、現代における寺院の可能性を示唆しています。変化を恐れず、しかし伝統を大切にしながら、新しい時代の寺院のあり方を模索する。御朱印はその第一歩なのかもしれません。

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