「お一人様」の老後と墓じまい――ある行政書士が伴走した終活の記録

⬛︎はじめに

「自分が死んだ後、お墓はどうなるのだろう」「頼れる家族がいないまま、施設に入ることになったら」――そうした不安を抱えながら、それでも誰にも相談できずにいる高齢者は、決して少なくありません。いわゆる「お一人様」と呼ばれる方々が直面する老後の問題は、相続・終活の現場においても、年々深刻さを増しています。

今回は、ある行政書士の先生が実際に関わった事例をもとに、お一人様の終活支援と墓じまいの実情についてお伝えします。制度の説明にとどまらず、「人」に寄り添うことの意味を、この事例はよく教えてくれます。

■ 相談のはじまり――絶縁状態の息子と、仙台に残されたお墓

その方は、高齢のおばあちゃん。ご親族には息子さんがいるものの、長年にわたる意見の食い違いから、ほぼ絶縁状態にある――そういった事情を抱えた方でした。

相談が持ち込まれたきっかけは、身元保証と死後事務委任でした。施設への入居を検討する中で、保証人となる存在が必要になった。しかし息子さんには頼れない。そこで行政書士の先生へ連絡が来たのです。

問題は、身元保証だけではありませんでした。「お墓はどうするのか」という課題が、その後の話し合いの中で浮かび上がってきます。

■ 息子さんへの確認――「すべてお任せします」

先生は、疎遠になっているとはいえ、息子さんにも丁寧に接触を試みました。

「お母さんが亡くなった後、どうされますか?」「お墓は守っていく意思がありますか?」

その問いかけに対し、息子さんの答えは明確でした。「すべてお任せします」。

これは、単なる投げやりではありません。複雑な家族関係の中で、事実上の意思確認ができた、重要な一言です。この確認があったからこそ、以降の手続きが「お母さんの意思」として進められるようになりました。

■ お寺へのご挨拶――生前に縁をつなぐという選択

多くの終活支援では、本人が亡くなってから関係者との調整が始まります。しかし今回の先生が取った行動は、少し違いました。

おばあちゃんがまだ元気に動けるうちに、一緒にお墓参りへ行き、ご住職に直接ご挨拶をしたのです。

これは非常に重要なステップです。亡くなってから初めて連絡するのではなく、生前に「この方が亡くなったときは、こういう段取りで進めたい」という意思疎通を、お寺との間で丁寧に行っておく。そうすることで、いざというときの手続きが、混乱なくスムーズに進みます。

ご住職との面識ができたことで、「お葬儀の後に納骨をして、その後墓じまいまで行う」という一連の流れについても、事前に話し合うことができました。

■ 墓じまいの条件が整った理由

お墓の整理、いわゆる「墓じまい」は、複数の関係者の同意が必要なことも多く、スムーズに進まないケースも少なくありません。しかしこの事例では、比較的整理がつきやすい状況にありました。

理由は2つあります。まず、そのお墓にはご主人とおばあちゃんのお2人だけが入る予定であるということ。関係者が限定されるため、意思決定がしやすい状況でした。次に、息子さんがすでに「お任せします」と意思を示していたこと。

「墓じまいは、お母さん自身の意思で進めることができる」――その判断が、この事例では成立していたのです。

■ 費用の工面まで、「完結」させた支援

先生の関わりは、手続きの段取りを整えるだけにとどまりませんでした。お葬儀から納骨、そして墓石の撤去に至るまでの費用を事前に把握し、必要な資金を確保・管理する体制まで整えたのです。

「費用はこのくらいかかるので、今のうちにお預かりして管理しておきましょう」という形で、経済面での不安も取り除きました。

一般的に終活支援は、「何をすべきか」を教えるところで終わることも多いです。しかし実際に必要なのは、「誰が、いつ、いくらで、どう実行するか」まで見通せる支援です。この事例では、その全体像が生前のうちに整理されました。

■ 今、施設で健やかに暮らしておられる

現在、そのおばあちゃんは施設に入居し、まだまだ穏やかに暮らしておられるといいます。

先生はこう話します。「その後のことは全てお任せくださいという状態ができている」と。これはただの言葉ではありません。お寺との連絡体制、費用の確保、死後事務の委任、身元保証――それらが整った上で、初めて言えることです。

不安を抱えたまま施設に入るのではなく、「備えができた」という安心の中で暮らせること。それが本当の意味での終活支援ではないでしょうか。

■ 墓じまいを「問題」にしないために

墓じまいは、現代の日本においてますます現実的なテーマになっています。少子化や家族形態の変化により、「お墓を守っていく人がいない」という状況は珍しくなくなりました。

大切なのは、「問題が起きてから動く」のではなく、「動けるうちに整理しておく」という姿勢です。本人が元気なうちにお寺へご挨拶に行き、家族の意思を確認し、費用を工面しておく。そのプロセスを一緒に歩んでくれる専門家の存在が、これからの時代には欠かせません。

「転ばぬ先の杖」――この言葉をある行政書士の先生が大切にしているのは、まさにこうした現場の経験があるからこそです。

■ まとめ

今回ご紹介した事例を通じて、お一人様の終活支援には、手続きの代行以上のものが求められることがよくわかります。家族関係の調整、お寺との事前連絡、費用管理、死後事務委任――これらを一貫して担う存在が、生前からそばにいること。それが、「最後まで安心して生きられる」という実感につながります。

もし「自分も将来こういう状況になるかもしれない」と感じていらっしゃる方がいれば、まずは一度、相続・終活の専門家に相談することをお勧めします。

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