コロナ禍が突きつけた課題——布教師と収入の問題
2020年、コロナウイルスの感染拡大によって社会全体が大きく変容しました。法座も中止になり、布教の機会が一斉に失われた時期、最も影響を受けたのが「布教師」と呼ばれる方々です。
大規模なお寺であれば、多様な収入源によってある程度の安定を保てます。しかし、布教活動を主な収入源としている小規模なお寺や布教師の方々にとっては、それは文字通り「収入がなくなる」事態を意味しました。
「布教師さんこそ、仏教を伝える最も重要な役割を担っている。その方たちがやっていけるようにする何かいい方法はないか」——そのような問題意識が、あるポータルサイト立ち上げの原点となりました。
「お坊さんの情報が見つからない」という現実
サイトを立ち上げた背景には、もう一つの切実な課題がありました。それは「お坊さんを探したくても、情報がない」という実情です。
お寺で法要や葬儀を行う際、複数の僧侶が必要になることがあります。しかし、知り合い以外の僧侶に声をかけようとしても、顔写真も経歴もプロフィールも見当たらない——そういったケースが多いと言います。「知ってる人に声をかけるしかできない状況」というのは、お寺同士の横のつながりを妨げる一因でもあります。
また、お参りに来た方が「あのお坊さんはどんな人なのだろう」と名前を検索した時、情報が何もヒットしないケースも少なくありません。これは機会の損失であるだけでなく、布教師さんの存在が世の中に届かないという問題でもあります。
サイトの構造とマネタイズの考え方
ポータルサイトは、登録した僧侶がウェブ上での「顔」を持てるようにすることを目的として設計されました。名前で検索した際にプロフィールが表示され、連絡が取れる導線が整っている——そのシンプルな仕組みを整えることが、当初の目標でした。
マネタイズについても、明確な方針があります。「紹介料をお布施から抜く」という方法は取らない、というものです。「お布施はお寺に納めるお金。途中でかすめ取ることはすべきでない。もし紹介料を得るなら、最初から明示すべきだ」という考えに基づいています。
代わりに、仏具関連の企業などによる広告掲載や、アフィリエイトによる収益モデルを採用しています。登録した僧侶がメディアで取り上げられたり活躍したりすれば、自然と検索流入が増える。その流れがサイト全体の価値を高め、広告効果にもつながるという考え方です。関わる人全員にとって公正な状態であることを、運営の根幹に置いています。
「自己PRが苦手」なお坊さんたちへ
サイトへの登録を促す際に、最も多く返ってくる言葉が「私みたいなものが登録していいんですか」というものだと言います。著名な住職や学識のある僧侶が並ぶ中で、自分が登録することへのためらい——これは布教師の方々に限らず、多くの僧侶に共通する感覚かもしれません。
しかし、「登録するかどうかの判断はユーザーが行うもの。お寺側が遠慮する必要はない。それよりも、ウェブ上に自分の存在を示す場所があるということが大切だ」という言葉は、的を射ています。
お坊さんは総じて自己PRが不得意だとも語られます。ウェブサイトの整備や情報発信の基礎すら整っていないお寺も多い中、誰かが代わりにその場を作ることが必要だった——それがサイト運営者の原動力になっています。
情報発信がお寺の信頼をつくる時代へ
現在、このポータルサイトには800名以上の僧侶が登録されています(2024年時点)。立ち上げから数年が経ち、登録者数が増えるにつれて、見える景色が変わってきたと言います。
「100を超えた時、200を超えた時、300を超えた時、それぞれで景色が違う。」その言葉の意味するところは、単なる規模の拡大ではなく、サイトが一定の信頼性と存在感を持ち始めた、ということでしょう。
お寺と人々をつなぐ手段は、今後ますます多様化していきます。その中で、情報発信の有無がお寺の信頼形成に直結する時代が、すでに始まっています。「名前を調べた時に、見せたいものがちゃんと載っている」——この当たり前のことを整えることが、これからのお寺にとって一つの重要な課題であると、このサイトの存在は静かに示しています。





