葬儀業界の変容と真心の葬儀を取り戻すために

葬儀のあり方はどのように変わったか

かつて葬儀の依頼や相談は、お寺が窓口となり、葬儀社がその補助を担うという形が一般的でした。斎壇は町内会が所有し、葬儀にかかる費用も現代と比べれば抑えられており、一人の導師だけでなく、複数のお坊さんが参列することも珍しくありませんでした。お布施についても、バブル期以前は現在ほど高額ではなく、相応の金額で依頼できたといいます。

状況が大きく変わり始めたのは、ある大手葬儀会社が全国規模でセレモニーホールを展開し始めたころからです。それまで、葬儀の場は「お寺・自宅・集会所」という三択でしたが、専用ホールでの葬儀が急速に普及しました。それに伴い、葬儀の受付・運営も葬儀社が一手に担うようになり、ホール使用料や斎壇のレンタル費用が加わるかたちで費用は高騰の一途をたどっていきます。

お布施もバブル期前後から上昇し、かつては複数の僧侶が参列しても比較的手頃な金額であったものが、時代とともに変化していきました。そうした流れの中、約十五年前にインターネットを通じた葬儀仲介サービスが登場し、パック料金による「葬儀費用の見直し」が社会に広まるようになります。葬儀費用を抑えたいという一般の方々のニーズは確かに存在しており、そうしたサービスが急速に広まっていったことには一定の必然性がありました。

 

変化の中で生まれた危機感

葬儀社が運営を主導するようになり、お坊さんの立場は変質しつつあります。ご遺族に寄り添い、苦養の心を受け継いでいただくことこそがお寺本来の役目であるにもかかわらず、葬儀がまるで一つのイベントのように進行し、僧侶が「儀式の備品」として扱われるような現場も生まれています。

仲介サービスに登録された葬儀社の質はまちまちであり、丁寧な葬儀社に巡り会えたご遺族がいる一方で、いい加減な対応をされて後悔したという声も少なくありません。宗旨によってご本尊が異なることすら把握していない葬儀場も存在するという現実は、単に業者の質の問題にとどまらず、葬儀が持つ意味そのものが軽視されていることを示しています。

こうした状況を目の当たりにしたある住職は「このままではきちんとしたお見送りができなくなる」という強い危機感を抱きます。お寺発信の葬儀を取り戻したい——その一念が、新たな活動への第一歩となりました。葬儀はポイントではなく、また単なるイベントでもない。この世でいただいたご縁に感謝し、再会を願うための大切な儀式であるという確信が、行動の原点にあります。

当初は収益も上がらず、試行錯誤の日々が続きました。大手仲介サービスと同じ土俵で戦うことの難しさを実感した末に辿り着いた答えが、「地域密着型」への転換でした。葬儀を必要とする方々への直接的なサービス提供、そしてお寺との連携強化に注力することで、現在では赤字を出さずに運営できるまでに安定してきたといいます。

遠方からの依頼については対応が難しい旨を正直に伝えるなど、誠実さを優先した運営方針を貫いています。提携先の葬儀社についても、不必要な追加費用を請求するような業者とは手を組まないという方針を明確にしており、ご遺族への透明な対応が口コミでの評価にも繋がっています。

一人ひとりに向き合う運営のかたち

こちらの大きな特徴の一つは、代表者自身が打ち合わせに必ず同席するという姿勢です。仲介するだけで後の対応を葬儀社に丸投げするのではなく、ご遺族と葬儀社の間に立ち、費用の透明性を担保しながら葬儀全体をサポートします。大手仲介サービスの多くが依頼を受けたあとは葬儀社に任せきりになるのに対して、ここでは「寄り添い続けること」が一貫した方針です。

業務のほぼすべてを一人でこなしているため、繁忙期には対応が難しくなることもあり、想定外の追加費用が発生してご遺族に不信感を持たれてしまったという苦い経験もあります。人員を増やせば費用もかかる——この構造的な課題は今後の大きなテーマです。「自分でできる範囲を超えると品質が下がる」という現実と、「もっと多くの方に届けたい」という思いのはざまで、今も模索が続いています。

それでも、「安ければいい」というお客様には正直に「うちには向いていない」とお伝えし、きちんとした見送りを望む方々と真摯に向き合うというスタンスは変わりません。費用を下げることで依頼を増やそうとするのではなく、選ばれるべき理由をきちんと持つ——それが創業時から変わらぬ理念です。

葬儀の司会も、可能であれば代表者自身が担いたいというこだわりがあります。知らない人間が型通りの進行をこなすのではなく、故人のことを知り、ご遺族の気持ちに寄り添った言葉で式を進行すること。これが、「真心の葬儀」の具体的なかたちです。小さな取り組みの積み重ねが、やがて葬儀のあり方を変えていく力になると信じています。

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