第55回葬儀・法要コラム「相続の対象となる財産とは」

相続対象に当たる財産

 

 相続財産とは、相続によって相続人に引き継がれることになる被相続人の権利義務のことをいいます。分かりやすく言えば、被相続人が亡くなった時点で有していたプラスの財産とマイナスの財産のすべてが相続財産となるのです。いわゆる「遺産」と同じと考えても問題ないでしょう。

 相続人が複数いる場合は、相続が開始されると、相続財産は分割が確定するまで相続人全員の共有となります。相続の対象になる財産には、亡くなった被相続人から受け継いだ財産で金額を見積もることができるあらゆるものが含まれます。預貯金や有価証券などの金融資産、不動産のほか、自動車など、プラスの財産動というべきものもあります。このほか、故人の財産ではないものの故人が死亡したことで受け取ったものは、相続財産とみなされて相続の対象になります。

 そして、いわゆる借金、買掛金、住宅ローン、小切手や、未払いの所得税と住民税、その他未払いの税金などはマイナスの相続財産として承継されます。

 相続の開始後は、財産の分割や相続税の計算のために、プラスの財産もマイナスの財産ももれなくリストアップし、その評価額を出す必要があります。

 

故人の預貯金を引き出すには

 

 死亡した時点で、故人の財産は遺産となり、相続の対象となります。預貯金も遺産ですから、口座は「凍結」され、遺族が勝手に引き出すことはできなくなります。正式な手続きを踏んで口座から預貯金を引き出せるようになるのは、遺産分割協議が終わってからで、通常は数カ月かかります。

 金融機関が口座を凍結するのは、親族のだれかが勝手に引き出せないようにするためです。遺族の1人が勝手に引き出して使ってしまう危険を避けるのですから、「凍結」そのものは、銀行の責務として当然の措置と言えます。

 預貯金を引き出すためには、遺産の分割を終えた後、故人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書を添えて手続きしなければなりません。ただし、医療費や葬儀費などの支払いのためにまとまった現金が必要な場合は、分割前でも特別に応じてくれる金融機関も少なくありません。

 保証人が必要な場合もあり、引き出す限度額も設けられます。手続きに出向く人は預貯金通帳、キャッシュカード、届出印、代表者の実印などを準備してから金融機関に向かいましょう。

 

相続対象に当たらない財産

 

 相続財産は、被相続人に属していた一切の権利義務を意味しますが、被相続人に属していた権利義務であっても、例外的に相続財産に含まれず、相続によって承継されないものもあります。

 非課税財産を具体的にあげると、墓所、寄付金、公益事業用財産などで、社会通念上、相続税の課税対象とするべきではないと考えられている財産のことを指します。そのため、ひとつの節税対策として、財産を現金で持っているよりも墓所を亡くなる前に購入しておく方法があります。墓所と同じように、相続した財産を国、市町村、公益法人に寄付した場合の財産についても、相続税の課税対象とはなりません。

 また、被相続人が亡くなったことによって相続人が受け取ることになる生命保険金の一部や、相続人が代わって受け取る死亡退職金の一部も課税対象とはなっていません。

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